米国商標の直接出願[米国商標制度]---www.globalpat.jp/usmarks/ 有明国際特許事務所
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米国商標制度の概説

 米国の商標制度を日本の商標制度との比較で説明いたしますと、1)出願の基礎なる概念が存在する。2)使用主義がその中心にある。3)商品・役務の表示が日本や欧州のものとは大きく異なっている。4)商標自体の概念が広い。5)不正競争防止法がランハム法に規定されている。6) 政府が主導する度合が日米では異なっている。といったところではないかと思います。

1)出願の基礎とは

米国で商標を出願する場合に、5つの出願の基礎(Base)のうち少なくとも1つを選択する必要があります。このような出願の基礎の選択は日本の法律にはありません。5つの出願の基礎は、1)Based on Use, 2) Based on "Intent-to-Use," 3) Based on a Foreign Application, 4) Based on a Foreign Registration,5)Based on extension of protection of an international registration to the US (Madrid Protocol)の5つです。アメリカ人が自国で出願するときは、1)Based on Use, 2) Based on "Intent-to-Use"のどちらかになります。日本の会社が出願するときは、1〜5のいずれかを選択して出願することになりますが、日本の登録もしくは出願を基礎としてマドプロ出願をする場合には、5を選択することになります。これらベースの違いで、提出する書類や宣誓書が異なります。2のBased on "Intent-to-Use”の出願(ITU出願)の場合には、登録に際してStatement of Use (Allegation of Use)を提出する必要があり、提出できなければ登録できません。
5つの出願の基礎(Base)
2)“使用主義を中心としている”とは
アメリカ商標制度の考え方は、使用主義を前提としているというのは割と知られているところと思います。ITU出願の場合使用証明を提出しますが、そこには指定商品の全てについて使用することを宣誓するようになっており、もし指定商品の全てについて使用していなければ宣誓書の提出時に分割するか、使用しない商品を削除する必要があります。もし使用していない商品について登録を受け、不使用を理由に取り消しを受ける場合は、従前のMedinolの審決例によれば、虚偽の宣誓を行ったものとして登録の全部が取り消しとなり、Medinolを破棄した現行のBose事件判例によれば、単なる過失で虚偽の宣誓となった場合は、商品を限縮することで救済されますが、過失以上の意図的な虚偽の場合は取消となると考えられています。この点で、日本の実務の不使用取消審判は、一部の商品が不使用であっても、取り消し請求をかけた商品の中に使用しているものが1つでもあれば取り消しを免れるのと好対照です。換言すれば、日本や欧州の登録には、使用していない商品が指定商品として含まれていても、それだけで取り消されることはないのですが、アメリカの場合には、商標不使用の商品の存在は全体の取消につながるおそれがあります。
さらに使用主義を徹底させるため、アメリカでは2つのチェックポイントを用意しております。即ち、登録から5年目と6年目の間に、使用証明と宣誓書を提出する必要があり、10年毎の更新時にも同様で、使用についての証明と宣誓書を提出する必要があります。また、ITU出願では、最初の更新までに通常3回の使用証明の提出が必要です。登録時のStatement of Useの提出時には、確かに使用していたが、登録から5年目と6年目の間のSec.8の宣誓書の提出時には、すでに使用を辞めた商品がある場合、その商標不使用の商品については削除する必要があります。

3)商品・役務の表示が日本や欧州のものとは大きく異なり具体的である。
アメリカもニース協定(Nice Agreement)に入っていますので、区分(Class)という概念では統一されていますが、実際の商品や役務の表示(Indication)自体は日本や欧州のものとはかなり異なっています。日本の実務では、商品の表示に包括的は表現が使用されていますので、例えば“電子応用機械器具及びその部品(第9類)”にコンピュータソフトウエアが含まれるとされていますが、アメリカではそのような包括的な表示は認められず、"Computer software for encryption"やComputer search engine software″のように個々具体的な表示が必要です。米国の実務では、米国の商標審査官は、"apparatus"や"device"というような特許側ではクレームの用語として典型的に使用されている言葉を嫌うとされています。米国での適切な表示を選択する際には、米国特許商標庁のTrademark Acceptable Identification of Goods & Servicesのデータベースを検索して適切な表示を選択するべきでしょう。1973年に米国は国際分類を採用しており、US分類(United States Classification)は2次的な分類になりました。

"Foreign registrations will often include broad statements of the identification of goods and services. In many cases, the identification is merely a repetition of the entire general class heading for a given class. These broad identifications are generally unacceptable in United States applications. The identification of goods or services in the United States application must be definite and specific even if the foreign registration includes an overly broad identification." TMEP1402.01(b)より

4)商標自体の概念が広い。
米国では出所表示機能を果たすものは商標として登録可能です。商標の定義としては、文字、名前、シンボル、音、色であって他人の製品と自分の製品を区別し、その出所がどことは知られていなくとも出所を示すものとされています。平たく言えば、出所表示(source designator)であれば、商標となり得ると考えられます。最近では、日本でも検討されている音声商標、スローガン、色のみの商標などは、米国の実務では既に登録可能なマークとして考えられており、スローガン、色のみの商標は使用による特別顕著性(Secondary Meaning)が登録には必要とされています。

5)不正競争防止法がランハム法に規定されている。
日本の商標法は、登録商標が中心となっており、登録をするための手続き、登録商標の権利行使などが条文の内容となり、未登録の商標を保護する法令として、不正競争防止法が別の法令として定めらています。米国の場合には、商標法であるランハム法の一部(Lanham Act sec.43(a))が、不正競争防止法となっており、不正なマークの使用による弊害防止や未登録の商標に対する不正競争も商標法の範囲内となっています。また、ランハム法sec.43(c)は連邦のDilution防止条項とされ(1996年施行)、従来は州法ベースの訴訟であったものが、連邦法での訴訟が可能となりました。

6) 政府が主導する度合が日米では異なっている。
商標権者同士の距離感のような話になりますが、丁度陸上のトラック競技のように例えられるのではないかなと考えております。先ず日本の場合、商標登録をする場合、包括的な商品や役務の表示により、実施に使用する商品よりも広い範囲での保護が与えられることになりますから、例えば類似群コードの幅のレーンのセパレートコースが与えられ、その範囲内で走り回る分には、競争相手がルールを犯さない限り侵入してこないような環境が行政庁から与えらているように考えることができます。一方、米国の実務は、使用を前提としていますから、使用しない商品や役務のようなレーン幅が与えられることはありません。競技は中長距離種目のようなオープンコースで、選手の体同士はぶつからないようなルールはあると思いますが、行政主導で用意する走行レーンのようなものはないような感覚です。このため、選手同士はわずかな商品や役務の非類似によって衝突を避けることができますが、選手同士は近づきすぎると警告や提訴という手段、日本のような行政により依存した解決ではなくむしろ司法寄りの解決手段で距離を維持することを行います。寝ている猛獣は起き易いように思います。