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日本の特許出願に慣れた方でも、外国特許出願は十分には分からないことが多いと思います。日本の特許出願の審査段階での相手は日本の審査官ですが、外国への特許出願ではその国や地域の審査官であり、現地の弁護士や弁理士を雇って英語で実際の指示など送りながら仕事をしてもらう必要があります。 国際出願・外国出願とは 日本での特許出願を済まされた方の疑問の1つは、その特許出願が権利化された場合に、どの程度の効力があるのかという点にあると思います。日本で権利化された特許は、日本の国内だけで有効ですので、特許侵害による権利行使を行う場合には、日本の領土のどこかに侵害が発生した場所があるはずです。特許が物の発明に対して付与された場合であって国外で製造された侵害物を対象にする場合には、その物が輸入された時に差止めや損害賠償の請求が可能となります。このため外国で製造されて全く日本に入ってこない場合には、日本の特許は役に立ちません。例えば中国で生産され、日本を通らずにアメリカで販売される場合には、日本の特許は使えないという状態になります。そこで、世界中での消費国(欧州3億人、米国2億人など)、生産国(中国、韓国、台湾など)での権利取得について考える必要も生じます。原則は、権利によって保護を求める国の特許を取得する必要があり(専門的には属地主義といいます。)、権利がない場合には自由技術(Public Domain)として誰もが自由に真似できる技術になると思います。 2007年の現段階では、外国で権利を取得するためには、その国または地域に所定の特許出願をする必要があります。1883年のパリ条約のおかげで、その国に住んでいないとだめとか、経済活動や営業活動していないとだめということはありません。全くのアイデアだけでも諸外国で権利化可能です。但し、所定の形式の書類を提出する必要があり、通常は現地代理人への委任状(Power of Attorneyとか、略してPOAとか言います。)が必要であったり、発明者の譲渡証のサインが必要であったりもします。書類は、国によって多少違いますが、その内容は言語の違いを除けば、ほぼ似たような提出書類であり、明細書、請求の範囲(請求項)、図面、要約などは共通の内容になります。従って、翻訳を行うことで、その国の形式に概ね合わせることが可能となりますが、細かい規則が国ごとに違う場合も多く、提出時にはその国の特許庁に払うオフィシャルフィー(Official Fee)とその国の代理人に支払うアトーニーフィー(Attorney Fee)の両方がかかります。 全くの初心者がしばしば誤解していると思われる事項は、“国際特許”という権利があって、それが登録されれば全世界で通用するというように思いs違いしている点です。現在、そのような全世界で通用する権利はなく、特許自体は各国又は地域ごとの権利になっています。似たような表現ですが、国際特許出願(PCT出願)という出願の形式があり、出願の初期段階を国際段階として取り扱い、国際特許出願には出願番号としての国際特許出願番号が付与され、国際公開された場合には国際公開番号(ex. WO/2009/00012**)が付けられています。これらは公的な機関が付与したものですが、権利として発生している訳ではありませんので排他的な効力はありません。
国際特許出願(PCT出願)は、特許協力条約に基づく出願であり、PCTはPatent Cooperation Treaty(特許協力条約)の略語です。この特許協力条約に基づく出願をすることを国際出願或いは国際特許出願をするというように表現します。国際特許出願(PCT出願)の仕組みについては、情報源のサイトで詳しく説明しますが、簡単に言うと、各国に対する出願について、方式チェックと予備的な調査の範囲については、各国でやらずに、PCTのシステム内で済ませてしまい、その後の実体的な審査は各国に委ねるようにしています。出願の最初の段階だけ、複数国でそれぞれ個別に進めずにまとめるようにしたシステムとも言えます。外国での権利取得を目指す場合、途中で必ず各国への国内段階(National Phase)への移行を進める必要があり、そのための翻訳文なども準備する必要があります。最近では、PCTのみなし全指定なども可能になり、優先日から概ね30ヶ月で国内移行を進めれば良いことから、時間的に余裕があり、国際出願を行って外国の権利を取ろうとする数は増加しております。 外国出願に際しては、優先権(Priority Right)という言葉を良く聞くと思います。端的には、この優先権を使うとタイムマシンを使うようなメリットがあります。映画“Back to the future”のデロリアン (Delorean) は、未来に行ったり、過去に戻ったりですが、優先権は先の出願を行った日に戻るだけです。優先権を使うことを優先権を主張(Claim)するといいます。優先権を主張しながら、外国に出願を行った場合には、原則としてその先の出願の日で、新規性や進歩性などの特許要件を判断することになり、外国における現実の出願日よりも先に提出できたことになる利点があります。先の出願の日を優先日(priority date)と言い、優先日から1年間だけ優先権を主張することが可能です。外国出願に際して必ず優先権を主張しなければいけないかというと、優先権を主張せずに外国出願することも可能です。優先権を主張しない場合のメリットは手続きが簡素化される程度ですので、通常は優先権を主張する場合が極めて多く、優先日から現実の出願日までの間に第三者が同じような特許を申請しても排除することが可能です。 国内移行も誤解され易い用語の様に思います。国内移行は、国際特許出願の国際段階から各国への国内段階へ移行させる手続ですので、権利を取得しようとする国や地域ごとに行う必要があります。“国内”とあるので、日本国内を意味しているようにも受け取れますが、各指定国への手続きであり、国際出願に拠らない外国出願の出願手続きと同様の手続きとなります。具体的には、優先日から概ね30ヶ月目までに行われる国内移行の際に、英文などの翻訳文を提示する必要があり、翻訳準備なども必要になります。 現在は、国際出願をみなし全指定とする場合が殆どですので、この国内移行の際に本当に権利を狙いに行く国を選定することになります。医薬品などの特許が最重要である産業を除いて全指定をそのまま進めることは先ずないと思います。この選定作業の際に、生産国なのか、経済活動にかかる地域なのかなどを判断する必要がありそうです。優れた特許でも、自分で特許製品を製造や販売する予定もなく、その国の人にはまねされそうもなく、ライセンスなどの可能性も低い場合には、その国の権利を取る必要はないと思いますが、ライセンスの可能性なども考慮すると全てが可能性なしとは言い切れないところもあり、経営判断を伴う悩みどころと思います。欧州はEP(欧州特許)という形式でまとめて進めることができ、典型的に欧米を経済活動の拠点としてUS(米国)とEP、生産拠点の可能性でCN(中国)とKR(韓国)を選ぶ例があります。事業活動が計画どおりではない場合で資金を温存する必要がある場合や、調査報告でそのものズバリが存在していた場合には、国内移行を行わず、そのまま流すこともあります。その場合でも、国際公開されているために第三者は同じ内容の権利を後出しで取ることを防止しているというメリットは残ります。 外国出願の場合には、必ずといって良いほど現地代理人が選定され、その代理人を通じて手続きが行われます。PCTではないパリルートなどの外国出願の場合には、出願の初めからその権利取得を予定する国の代理人が選定されます。PCTの場合には、国内段階移行後の手続のために国内段階移行の際に選定されます。欧州特許の場合には、欧州弁理士(European Patent Attorney)という有資格者が選定されますが、概ね英国かドイツの弁理士である場合が多く、フランスや他の欧州地域の弁理士の数が少ないために、英国かドイツの代理人に落ち着く場合が多くなります。アメリカもご存知のように星(英語的には蟻でしょうか)の数ほど弁護士がいる国で、特許を専門に仕事をしている弁護士は特許弁護士(Patent Attorney)という資格者です。この特許弁護士は、通常の弁護士(ロースクールを卒業して州の司法試験に合格した者)が更にPatent Barと呼ばれる弁理士試験のような特許手続きに関する試験に合格して初めて特許弁護士となります。弁護士でない普通の者がPatent Barを合格するとPatent Agentとなりますが、米国特許商標庁にUSPTOに対する手続きは可能です。 韓国や台湾の代理人は、日本の弁理士システムと同じように資格者を選抜しているために、比較的に頭脳明晰という感じの方が多いように思いますし、日本語が達者な方が多いと思います。不思議なのは中国(Mainland)でWTO加入以来門戸を開いた状態になって、急に多くの人間が既に知的財産の専門家になっております。10年以上前は特許を扱う事務所は確か有名なところで3つぐらいしかなかったのですが、今ではかなりの数(最低でも100ぐらい)があると思います。 どのようにして代理人を選定するかはケースバイケースです。依頼者の方から現地代理人を指定される場合もあり、依頼者のためにこちらで選ぶ場合もあります。現地代理人を指定できるのは、既に取引関係がある場合であり概ね大企業が依頼者の場合には代理人が指定される場合も多く有ります。個人や中小企業の場合には、代理人を指定するほどの海外ネットワークがない場合が多いので、こちらで予算や技術的なバックグラウンド、コミュニケーションの取り易さなどを考えながら選定することになります。 外国へ特許出願をする場合に、多くの費用がかかるのはその翻訳代です。初めから英語で発明の内容が準備されている場合を除いて、通常は日本語の明細書を翻訳して外国特許出願を行ったり、PCTでの国内段階への移行手続きを行います。優先期限ぎりぎりの場合のように急ぐの場合には、翻訳なしで元の言語のままの特許出願をする方法も取れる国もあります。しかし、2ヶ月〜3ヶ月以内には指定されたその国の言語で出願書類を提出する必要があります。いずれにせよ殆どの場合、特許明細書や請求の範囲などの翻訳が必要になります。 特許の翻訳は特殊な面もあり、定型的な面もあり、これらを外さないことが最低限の特許翻訳ですので、通常は特許事務所に依頼するか、特許翻訳の実績がある翻訳会社、翻訳事務所に発注することになります。翻訳者が特許の翻訳をする場合、例えば元の日本語の明細書が10ページぐらいの長さの場合でも、最初は内部の用語の統一性を検証したり用語を選択しながら進めるために、いきなり1日で数ページも訳したりはなかなかできないもので、3日か4日ぐらいはかかるのが通常です。慣れている技術分野で長文の明細書の最後の方は、用語の選択には時間がかからないため、半日で数ページの翻訳も可能ですが、人間なので常にはそのような速度では翻訳できないと思います。すなわち、翻訳も明細書作成と同じように手間のかかる作業であり、現地代理人には期限前に送付しておく必要があることから、事務所としては1ヶ月前まで好ましくは2〜3ヶ月前までに外国出願するかどうかの判断や国内段階へ移行させるかどうかの連絡が必要になります。もちろん、例外もあり、数日で全部準備することも可能ですが、この場合は緊急事案として費用は高くなるのが一般的と思います。 外国に特許を初めて出願される方は、費用がいくらかかるかが気になるところと思います。一般的には、1つの国で特許を取るのは平均して約90〜120万円ぐらいの出費になりますので、大企業のように予算がある場合でも玉石混合の中の玉だけを外国出願するという傾向は変わらないように思います。約90〜120万円の金額は出願の際に一度にかかる訳ではなく、出願の時に約半分〜3分の2程度かかり、後の中間処理や登録の段階で残りがかかるように進行します。 国際特許出願を先ず出願し、その後、国際段階から国内段階に移行させる手続きの場合には、国内移行の部分が直接出願に該当しますので、国際段階のところだけ費用(事務所の受任手数料とオフィシャルフィー:弊所平均50〜55万円)が余分にかかります。国際段階のところでは、方式チェックと国際調査及び特許要件についての見解書までが報告され、且つ優先権の基礎となる優先日から30ヶ月と時間的な余裕が得られることから、利用者は増加している状況です。優先日から30ヶ月になる前に、特許についての見解書の内容も考えながら事業性や市場性などを判断して、進めるべきものだけ進めることができ、調査報告の内容が余りにも近い発明を引例としている場合などではここで中断すればその後の段階の分だけ費用を抑えることもできます。 特許と同じように機能する出願形式としては、実用新案(Utility Model/Petty Patents)があります。アジアの国では、中国、韓国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシアの各国で実用新案又はこれに類する制度があり、欧州でもドイツ、オランダ、ギリシャ、アイルランド、フランス、スペイン、ポーランド、ポルトガル、イタリア、ロシア、ハンガリー、チェコ、ベルギー、フィンランド、デンマーク、ブルガリア、トルコ、ウクライナの各国に実用新案又はこれに類する制度があり、オーストラリア、ブラジル、メキシコ、コスタリカ、キューバ、グアテマラ、チリ、ソマリア、ウルグアイなどの国にも存在します。PCTで出願した場合でも、特許ではなく、実用新案として国内段階へ移行することも可能です。これらの実用新案は、費用を安く抑えることができると共に、実体審査を伴わない場合も多く、権利化までの時間を短くできるというメリットがあります。 |
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