国際出願・外国出願のための有明国際特許事務所のWEBSITEです。
TOP | 事務所概要アクセスサイトマップ問い合わせ

国際特許出願の言語

外国出願の1つの方法として、最近増加傾向にあるPCT国際出願では、出願の言語として日本語以外に英語によっても出願することも可能です。また、受理官庁として国際事務局に提出するのであれば、さらに他の言語(例えば、中国語、ロシア語、ドイツ語など)も出願可能な言語となります。日本の企業や個人の方が国際出願する場合は、日本語で特許庁を受理官庁とし、さらに特許庁が国際調査を行う場合が大多数となっていますが、敢えて英語で出願する場合の利点もいくつか存在します。ここでは、その利点の幾つかについて説明したいと思います。

@. 英文作成の柔軟性

パリルートの場合、すなわち各国にそれぞれ個別に出願する場合の外国出願用翻訳は、内容の追加や現地の方式にマッチした加筆や削除が可能で、英文を作成する場合に柔軟性があります。たとえば、請求項に複数従属項が含まれている場合、その複数従属項をさらに複数従属項で引用する形式は米国のでは認められていませんが、日本の実務では可能です。日本語の明細書を原文としながらパリルートで米国に出願する場合は、方式違反にならないように複数従属項をそれぞれの従属項になるように書き換えたりすることを行いますが、この作業をパリルートでは英文を作成する際に並行して行っています。一般的に、米国の請求項の形式では、構成要素ごとにセミコロンで分ける記載をしていますが、このような対応も英文作成時には可能です。ところが、PCTの翻訳の場合は、既に日本語で提出してある請求項を翻訳することになりますので国内段階移行時にはそのまま忠実に翻訳することが義務付けられています。このため従属関係を調整したり、料金を節約するために重複しすぎている記載を省略することが難しくなります。PCTの場合に、このような調整ができないのは、既に国際出願されているものを各国に提示するという原則があるためで、各国に方式を考慮しながら国際出願の際に日本語を予め調整しておく方法も解決策の1つではありますが、日本語で出願する限り英語に変換した場合の最終形態に近ければ日本語として逆にぎこちないものになる傾向に陥ります。また、翻訳を予定した日本語を作成する場合には、それだけ請求項に対して英語を考えた上で日本語作成するように配慮していることになりますが、同じ時間で直接英語を作成した方が時間的は短時間で済むように思いますし、パリルートの柔軟性を以って書類作成が可能となります。また、柔軟性があれば高品質な英語になるわけではありませんが、少なくとも英語作成する場合に日本語を忠実に訳すか意を酌んでドラフトするかでは、後者の方が英語らしい表現にし易いと思われます。

A. 欧州特許庁による調査

英語で出願した場合のメリットの1つは、欧州特許庁での国際調査を選択することが可能となる点です。英語で出願した場合に国際調査機関として日本の特許庁(JPO)と欧州特許庁(EPO)のいずれかを選ぶことができ、欧州特許庁を選択した場合には欧州特許庁からのサーチレポートを受け取ることができます。この欧州特許庁の調査を国際段階で済ませていた場合には、国際段階から欧州共同体に国内移行させた際には欧州特許庁の調査を不要にできるため、改めて欧州特許庁の調査費用は不要となります。逆に言うと、国際段階で日本の特許庁の国際調査があっても、欧州特許庁は独自の調査を行い、この欧州特許庁の独自の調査に費用と時間がかかります。また欧州特許庁の調査は、国際的にも信頼性が高いとされる点は多くの専門家が支持するところですので、特に欧州での権利化を進める場合には極めて有効な方法です。

B. 全体のコスト

英語で国際出願して欧州特許庁を国際調査機関とした場合には、国際段階での調査手数料は日本の特許庁に比べて高いものとなりますが、欧州(EP)を指定する場合には、国内移行後の欧州特許の中での調査手数料の減額がありますので、日本語で国際出願して日本の特許庁を国際調査機関とする場合との間でオフィシャルフィーの総額はほぼ同じになります。すなわち、欧州に移行する予定の国際出願は、欧州特許庁と日本の特許庁のどちらで調査して費用はほぼ同じになります。また、英語にする場合は、日本語から英語への翻訳をすることになると思いますが、パリルートで行っている翻訳を国際出願の際に行うことに過ぎないため、翻訳代が余計にかかるということにもならないと思います。国際出願を日本語を行う場合には、翻訳のタイミングが優先日から30(31)か月目となっていますが、それを一年半ほど早めることで国際出願を英語で進めることができます。

C. 国際公開の効果

米国特許要件の第102条(e)項は、後願排除効について規定しております。もし米国を指定国に含む国際出願が英語で国際公開された場合には、それの国際出願日から後願排除効が発生します。日本でいうところの29条の2の効果が、英語を言語とした出願を用い米国指定の場合に得られることになります。

Section 102.(e) the invention was described in . (1) an application for patent, published under section 122(b), by another filed in the United States before the invention by the applicant for patent or (2) a patent granted on an application for patent by another filed in the United States before the invention by the applicant for patent, except that an international application filed under the treaty defined in section 351(a) shall have the effects for the purposes of this subsection of an application filed in the United States only if the international application designated the United States and was published under Article 21(2) of such treaty in the English language;

D. 国内移行の容易性

例えば、中国での国内移行を考えてみると、現地代理人に日本語で書かれた明細書を直接提示して中国国内での移行を進めることも可能ですが、一般的には中間処理などの段階では英語でコミュニケーションをとる場合が多く、原文を引用する場合は英語の翻訳を作成しないで済むなどの英語ベースでの対応ができる点にメリットがあります。また、アジアの各国と欧米各国の複数国での権利化を進めていく場合には、各国の権利状況の微妙な差なども英語の汎用性を活かして有利に且つ総合的に把握することが可能となります。

まとめ

外国で権利を取得する場合は、殆どの場合は英語への翻訳が付随します。その翻訳作業を国際出願の際に行うことで、英文作成の柔軟性や欧州特許庁での調査などのメリットを得ることができます。特に欧州や米国での権利取得には有利な方法と思われます。